「ずっと一緒の君だから」~バレンタイン コハル編part1~

 

最初に出会ったのはβテストの時。

正式サービスの時にも、また会えるかどうかの確証もなくて。

私達は最初に出会った時の姿で、また出会えた。

 

全てが絶望に思えた<デスゲーム>開始の宣告で、私はその場に座り込んでしまったけれど、あなたはそんな私の腕を引っ張り上げてくれた。

なんの根拠もないけれど、私の手を引くあなたの後ろ姿から「大丈夫」という声を、私にかけてくれている気がした。

私の右手をギュッと強く離さないようにしてくれてたこと。

脇目も振らずに、私を広場から遠ざけようとしてくれてた無言の背中を、今でも鮮明に覚えてる。

「大丈夫」って声が、今でも私の中に響いている。

 

 

 

 

 

「――大丈夫よね?」

自室のドアを半開きにして辺りを見渡し、宿屋の廊下に誰もいないことを確認する。今日はちょっとだけ朝早く起きて、街にくり出そうと決めていた。いつもは一緒に行動している彼とも、今日だけは内緒。だって「バレンタインイベント」が開催しているから!

さぁ、このドアを開けて出発だ!と心の中で意気込むようにドアに手を伸ばす。

 

「おはよう、今日は早いね。」

おっ…!?はよう!!」

まさか彼も朝早く起きてくるとは思わなくて、物凄くぎこちない挨拶をしてしまった。…疑われていないだろうか?

「ちょっと出かけてくるね!」

「うん?どこへ?フィールド出るなら一緒に行こうか?」

「ううん!大丈夫!ちょっと街を歩いてくるだけだから!」

「そか、行ってらっしゃい。」

「うん!行ってきます!」

 

はぁ~!びっくりした!!

まさか今日に限って朝早く起きてくるなんて…、いつもは起きるの遅いくせに。

とりあえず、そんなに怪しまれてないっぽい?

「街を歩いてくるだけ」って嘘ついちゃったけど、今回ばかりは仕方ない。いつも一緒にいたらサプライズも何も出来ないじゃん。

 

「バレンタインイベント」は低レベルの初心者向けのクエストらしいから、たぶん私でもいけるはず!いつもは彼と2人でフィールドで戦っているから、ソロプレイっていうのは初めてだけど、今回ばかりは1人でやりきらなきゃ!

 

まずはイベントNPCからクエストを受注しなくちゃ。確か転移門広場にいるはずなんだけど……あ、いたいた。明らかに1人だけ長いコック帽を被って、白いエプロンを纏っているキャラクターがいる、おそらくあの人だろう。

 

「あの、クエスト受けたいんですけど。」

「ふむ、可哀想に。」

「え?」

「また1人犠牲者になってしまう者が現れてしまうとは…。」

「あの…クエスト…。

「決戦の時が来たのです!!(大声)」

 

話が噛み合ってないような気がするんだけど、クエストが発生したのかしら??

本当に1人でクリアできるのか、さっそく不安になるような幕開けでした。